MRI融合標的生検|泌尿器科|国立病院機構熊本医療センター
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泌尿器科
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MRI融合標的生検システムによる正確な前立腺組織生検
前立腺がん診断率アップ!
~県内初、MRI・超音波融合(フュージョン)前立腺生検の導入~
これまでの前立腺生検をより高い精度で行うため、2021年12月MRI・超音波融合標的生検システムであるトリニティⓇを導入しました。従来の前立腺生検は経直腸エコーで前立腺を観察し、MRIで指摘された病変部位(ターゲット)を頭の中でイメージし超音波画像上で病変を探し出し針生検を行ってきました。病変がはっきり同定できれば問題ありませんが、PSA値が20ng/ml以下の早期病変ではMRI上は同定できても超音波では見えないという事も多くあり、そのような場合は、おおよその場所に狙いをつけ生検の本数を多くすることで診断の正確さを担保していました。しかし、このMRIフュージョン生検ではMRI画像を事前にトリニティⓇのソフトウエアに取り込むことで、MRI画像上でのターゲットを超音波画像上にリアルタイムに描出することができ、確実に病変部を狙撃生検することが可能になりました。そのため、がん病巣の検出率が向上し、かつ局在診断も可能となる画期的な方法です。
近年、患者さまが増え続けている早期前立腺がんに対する治療法は多岐にわたりますが、個々の患者様に適切な治療法を提供するためにも、正確ながん診断および局在診断は重要であり、これまでも課題であった前立腺がんの過剰治療回避やより低侵襲な治療の提供も可能になるのではと考えています。また、正確な組織採取は不必要な再生検の回避にもつながり、前立腺生検による感染症や出血などの合併症も減らせるなど様々なメリットがあります。
当院ではこのMRIフュージョン生検を経会陰的に施行する為、麻酔科管理のもと2泊3日の入院で行っております。所要時間は30分程度で、これまでに80例ほどの症例を経験しました。通常の生検に比べてやや煩雑な準備工程がありますが、2022年度の診療報酬改定により正式に保険適応となり、従来の生検に比べ約5倍の点数が認められた事によりこれも解決しました。
我々はこのMRIフュージョン生検をむやみやたらと前立腺がんを見つけ出す手段ではなく、前立腺がんに特有な経過をみてもいい‘がん’か、治療すべき‘がん’かを判断するために必要不可欠な医療技術として捉えています。当院では倫理委員会の承認のもと、放射線治療科と協力し、まだ全国で3施設しか取り組んでいない密封小線源治療を使用した前立腺がん‘‘部分’’(フォーカル)治療に本技術を取り入れ、より低侵襲な治療として開始しています。
従来の前立腺生検では標的病変が小さかったり、ターゲットが前立腺腹側にあるため生検困難と思われる症例や、再生検が必要と判断された患者様もこのMRIフュージョン生検法により正確に組織採取・診断が可能となりますので、適応の患者様がいらっしゃいましたらご紹介の程宜しくお願い致します。
従来の2Dイメージの生検
3DイメージのMRIフュージョン生検