歯科口腔外科|国立病院機構熊本医療センター
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歯科口腔外科
歯科口腔外科部長あいさつ
「お口」は命の入り口です。
食事も、会話も、呼吸も口は大切な役割を果たしています。
歯科口腔外科は、口におこるさまざまな疾患について診断、治療する診療科です。とくに一般歯科では診断や治療が難しい疾患をもつ患者さん、またかかりつけの医院にて口の異常が見つかった患者さんが紹介を受けて受診されます。
また、当院の医師や専門スタッフとのチーム医療も積極的に行っており、総合病院歯科口腔外科の特色としての横のつながりを大切にして治療にあたっています。
口の健康は予防が第一ですが、早期発見早期治療も重要です。何か口の異常があれば、かかりつけの歯科医師、医師の先生に早めに相談されてください。
歯科口腔外科部長 中島健
診療内容・特色
外来では県内の歯科医院や他科医院から、一般歯科では困難な抜歯や口腔腫瘍、顎顔面外傷、口腔領域の感染症、顎関節疾患、口腔粘膜疾患などの口腔外科疾患を中心に多数の患者さんの紹介をいただいています。専門性の高い他科との連携もとれ、チーム医療を実践しています。特に耳鼻咽喉科や形成外科とは密接な連携を行い、頭頚部の重度感染症や腫瘍などで協働して治療にあたっています。また、近年、増加傾向にある基礎疾患を持っている患者さんの口腔外科的治療も院内の各科と連携して、細心の注意を払いつつ行っています。そのほか、障がいのある患者さんの全身麻酔や静脈鎮静法での集中歯科治療もおこなっています。さらに歯科治療恐怖症やハイリスクのある患者さんの口腔外科手術や歯科治療では笑気による鎮静法や静脈鎮静法を希望される患者さんがとても増えています。また、悪性腫瘍など不安が強い患者さんのために、看護師を含めた体制のなかで分かりやすい説明と治療に対する同意(インフォームドコンセント)を心がけています。
550床の病棟では、歯科衛生士、摂食・嚥下障害看護認定看護師が、口腔内の評価や口腔ケアの物品の購入ならびに口腔ケアの手技を病棟看護師に指導して、実施しております。各病棟には摂食嚥下リンクナースが配置され、口腔の評価や食事介助技術の伝達、治療が必要な患者の抽出など様々な口腔や摂食に関わることに関して、会議やセミナーなどで知識や技術の向上を図っています。さらに歯科は摂食嚥下チームの中心として、嚥下障害の嚥下内視鏡を用いた精密検査などの評価を行い、院内の各科や言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、看護師と連携をとり、入院患者さんの摂食嚥下機能の一日も早い回復のために力を注いでいます。
院内からは、手術前後や化学療法、放射線治療時の口腔管理について多くの患者さんの紹介をいただいています。特に口腔に症状の出やすい血液内科の化学療法、造血幹細胞移植患者の患者さん、口腔細菌と関係の深い心臓外科、循環器内科の手術前の患者さんの口腔管理の依頼があり、口腔機能管理を行っています。また骨粗鬆症の治療や悪性腫瘍の転移治療に用いる骨吸収抑制製剤投与前に副作用の顎骨壊死の予防のため、当科へ歯科治療と定期的なメンテナンス目的とした患者さんの紹介も多くおられます。さらにチーム医療として緩和ケアの患者さんにも口腔の訴えを傾聴し、口腔乾燥に対する症状緩和や口内炎などの疼痛緩和などの指導や薬剤投与、物品の紹介なども行っております。一方で、熊本県歯科医師会と連携したがん患者医科歯科連携事業を継続し、他科から紹介いただいたがん患者さんの周術期口腔機能管理の充実を図るべく、入院支援室の積極的利用を図っており、入院前から周術期口腔機能管理を連携歯科医院と共同して行っています。
症例数・治療・成績
院は救命救急センター、開放型病院、地域医療支援病院と多くの指定を受けていますが、それに伴って当科は口腔外科疾患を中心に令和5年度845名と多くの紹介をいただいています。初診患者は、令和5年度1667名で院外からの紹介率は52.1%で、残りはほぼ院内コンサルトの初診患者でした。地域の歯科医院などへ紹介する逆紹介率も46.5%でした。
令和5年度は入院加療を必要とする患者が年間326名、そのうち全身麻酔での手術ケースが93件ありました。入院の内訳をみると一般歯科では難しい埋伏歯の抜歯162名、顎骨嚢胞34名、有病者の口腔外科手術27名、顎骨骨折20名、口腔領域の炎症19名、口腔腫瘍19名(悪性腫瘍9名を含む)、障がい者の歯科治療10名、顎骨壊死8名、骨隆起6名、顎関節骨脱臼4名、その他唾液腺疾患などが17名でした。
スタッフ紹介
職名 氏名 免許取得年 | 専門医 所属学会 など | 専門分野 |
診療部長 歯科口腔外科部長 歯科口腔外科治療センター長 ナカシマ タケシ 中島 健 昭和60年 | 歯学博士 日本口腔外科学会専門医・評議員 日本有病者歯科医療学会専門医・指導医・評議員 日本口腔科学会認定医・指導医 日本顎顔面外傷学会評議員 日本口腔衛生学会評議員 日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士 歯科医師臨床研修指導医 九州口腔衛生学会幹事 日本口腔診断学会 日本老年歯科医学会 アジア口腔顎顔面外科学会 日本口腔ケア学会 | 口腔外科 一般歯科 |
歯科医師 モリ クミコ 森 久美子 平成20年 | 歯学博士 日本口腔外科学会認定医・専門医 AHA-BLSインストラクター 日本口腔腫瘍学会 日本口腔科学会 日本口腔診断学会 アジア口腔顎顔面外科学会 歯科医師臨床研修指導医 | 口腔外科 一般歯科 |
歯科口腔外科医長 タニグチ コウスケ 谷口 広祐 平成22年 | 歯学博士 日本口腔外科学会認定医・専門医 日本有病者歯科医療学会認定医 日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士 日本口腔診断学会 日本口腔科学会 日本老年歯科医学会 日本口腔顎顔面外傷学会 アジア口腔顎顔面外科学会 歯科医師臨床研修指導医 | 口腔外科 一般歯科 |
歯科医師 ナカガワ フミオ 中川 文雄 平成24年 | 歯学博士 日本歯科麻酔学会認定医・専門医 日本有病者歯科医療学会 日本臨床麻酔学会 | 口腔外科 歯科麻酔 一般歯科 |
歯科医師 ヤマガタ マユカ 山形 真有香 平成28年 | 歯学博士 日本口腔外科学会認定医 | 口腔外科 一般歯科 |
歯科医師 ナカオ ミフミ 中尾 美文 平成29年 | 日本口腔外科学会認定医 日本緩和医療学会 日本口腔ケア学会 日本有病者歯科医療学会 アジア口腔顎顔面外科学会 | 口腔外科 一般歯科 |
歯科医師 ウエダ ナツノ 上田 夏野 令和4年 | 日本口腔外科学会 | 口腔外科 一般歯科 |
歯科医師 ムライ ケンタロウ 村井 健太郎 令和4年 | 日本口腔外科学会 日本歯周病学会 日本有病者歯科医療学会 | 口腔外科 一般歯科 |
ご案内
外来診療は月曜から金曜の8:30~17:00、新患受付は8:15~11:00(急患は除く)、全身麻酔下の手術は月曜・水曜の午後に行い、静脈下鎮静下の手術が火曜・木曜の午後で、毎日午後は主に外来口腔外科手術と他診療科入院患者の歯科治療を行っております。
業績
(1)学会報告
2021年度
2021年5月 第89回 日本口腔外科学会九州支部学術大会
「造血幹細胞移植後に異時性口腔多発癌を認めた3例」
衛藤 理ほか
2021年11月 第66回 日本口腔外科学会学術大会
「舌と歯肉に同時性に認めた乳頭状扁平上皮癌の1例」
谷口広祐ほか
2021年11月 第54回 日本口腔科学会九州地方部会
「頸部壊死性筋膜炎の術後合併症として認めた嚥下障害に対し、多職種連携による早期介入を行った1例」
園山 卓ほか
2022年2月 第27回 国立病院機構熊本医療センター医学会
「当科外来診療室で施行した静脈鎮静下手術の検討」
中川文雄ほか
2022年4月 第76回 日本口腔科学会学術大会
「OK-432注入療法を施行したガマ腫症例の検討」
前田顕誠ほか
2022年度
2022年6月 第90回 日本口腔外科学会九州支部学術集会
「歯槽膿瘍と同一細菌が検出され血行性感染が疑われた脳膿瘍の1例」
早川真奈ほか
2022年7月 第27回 日本緩和医療学会学術大会
「時間依存性ROC曲線を用いた緩和ケア患者における口腔状態と生命予後との関連」OHAT STUDY(第一報)
中尾美文ほか
2022年11月 第55回 日本口腔科学会九州地方部会
「智歯抜歯における1泊入院下静脈内鎮静法の有用性の検討」
藤原裕也ほか
2023年1月 第28回 国立病院機構熊本医療センター医学会
「開窓療法により著明な骨増生を認めた再発エナメル上皮の1例」
前田顕誠ほか
(2)論文
2022年度
「頸部壊死性筋膜炎の術後に嚥下障害を合併した高齢患者に対し、多職種連携による早期介入を行った1例
園山 卓ほか 日本老年歯科医学会雑誌 37(1) 25-33, 2022
「von Recklinghausen 病患者にみられた舌平滑筋腫の1例」
早川真奈ら 日本口腔診断学会雑誌 35(2)157-161, 2022
「A case of synchronous multiple oral papillary squamous cell carcinoma of the tongue and gingiva」
Kosuke Taniguchi, et al. J Oral Maxillofac Surg, Med, Path 34(6) 764-768, 2022
「当院で行う造血幹細胞移植時の周術期口腔機能管理の標準化 -移植時口腔ケアプログラム2020の策定-」
中島 健ら 国立病院機構熊本医療センター医学雑誌 22(1):1-10, 2022
「当院の歯科外来診療室で施行した静脈内鎮静法下手術の検討」
中川文雄ら 国立病院機構熊本医療センター医学雑誌 22(1):11-18, 2022