免疫不全外来|小児科|国立病院機構熊本医療センター
小児科
免疫不全外来
原発性免疫不全症とは?
わたしたちの体は、病原体(細菌、ウィルス、真菌(カビ)など)や毒素が体内に侵入して感染症を起こした時に、それらに抵抗して排除するための機能を備えています。そして感染症が治った後は、同じ病原体の感染症に二度とかからなくなったり、かかっても軽症で済ませたりします。このようにして体を守る仕組みを「免疫」と言います。
体内では次の図のようにさまざまな細胞やたんぱく質が免疫に関わっています。特にT細胞やB細胞は病原体を記憶し、再び同じ病原体が侵入してきた時に速やかに排除するように働いています。
免疫のいずれかの要素が破たんしたために、免疫が十分に機能できない状態を「免疫不全症」といいます。これには先天的な原因で起こる「原発性免疫不全症」と、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)感染や薬、栄養不足などの原因で起こる「続発性免疫不全症」とがあります。
免疫不全症になると同じ病原体に何度も感染しやすくなったり、感染症の治りが悪くて長引いたり、感染症が重症になったりします。原発性免疫不全症を疑う具体的な症状については下図をご覧ください。
これらの所見のうち1つ以上当てはまる場合は,原発性免疫不全症の可能性がないか専門の医師に相談が必要です.この中で乳児期早期に発症することの多い重症複合免疫不全症は緊急に治療が必要です。
このような症状があり原発性免疫不全症が疑われた場合には、血液検査などを行って免疫細胞やたんぱく質の数量や機能を確認します。
原発性免疫不全症と診断された場合には、抗菌薬や免疫グロブリン製剤を使って感染症を予防します。それでも感染症にかかった場合には、速やかに適切な治療を受けることが必要です。
原発性免疫不全症を疑う10の徴候
重症複合免疫不全症(SCID)とは?
重症複合免疫不全症(SCID)は原発性免疫不全症のなかで最も重症な病気の一つです。頻度は約10万人に1~2人で、稀な病気です。先天的にT細胞の数や機能に異常があり、またB細胞の抗体産生も不十分です。患者は生後数ヶ月ごろから種々の感染症にかかり、多くが生後1年以内に死亡します。生後できるだけ早く、感染症にかかる前に診断して、根治療法を受けることで治癒も望めます。
近年欧米を中心に、新生児の血液に含まれるTREC(T-cell receptor excision circles)という物質を測定して、SCID患者を生後早期に見つける検査が行われるようになってきました。これは新生児マススクリーニングの血液ろ紙で調べられます。TRECが基準値以下でもSCID患者であるとは限りませんが、速やかに精密検査(血液検査)を受けてください。
原発性免疫不全症について詳しく知りたい方は、以下のサイトもごらんください。
産科および新生児医療機関のかたへ
新生児の原発性免疫不全症に対するマススクリーニング検査で検査陽性(TREC値がカットオフ値以下)であり、精密検査受診を依頼された場合には、速やかに国立病院機構熊本医療センター小児科を受診していただくよう保護者にお伝えください。受診の際には、「精密検査受診依頼書」と「母子手帳」をご持参ください。
受診・精密検査には予約が必要です。お電話でご予約いただいた後に、予約申込書をFAXでお送りください。
予約申込書は 外来紹介予約センターのページ をご参照下さい。