【第89号】尿失禁について 排尿障害のくすり 尿失禁・・・食事の注意点 | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第89号】尿失禁について 排尿障害のくすり 尿失禁・・・食事の注意点

くす通信

尿失禁について、排尿障害のくすり、尿失禁・・・食事の注意点

 【尿失禁について】

 尿失禁は 人間(動物でも)の尊厳に接する問題で以前は“おしっこが漏れるなんて恥ずかしい”とか“高齢者の問題”とあまり日の当たる疾患ではありませんでした。し かし、治療による症状の改善に喜ばれる姿を見ると積極的に治療することの必要性を感じます。特に、尿失禁に関する関心は日本の泌尿器科医のみならず世界中 の泌尿器科医で高まり、新たに下部尿路症という概念が確立されつつあり、この中で尿失禁は蓄尿症状(おしっこを蓄えることに障害がある)の範疇に属します。

 特に腹圧性尿失禁は女性を中心とし、腹圧が上昇する動作(咳・くしゃみ・いきみ・スポーツ・重いものを持ち上げる・突然の体位変換や歩行)で不随意(自分の意志とは関係なく)に尿が漏れる状態と定義され、全女性の約25%に認められる“病気”なのです(あなたが悪いのではなく病気が悪いのです)。

 診断には問診のほかに1時間パッドテストや排尿記録ともに鎖膀胱造影を行いその程度を見極め、理学療法(骨盤底筋体操)や薬物療法でいいのか手術がいいのかを判断します。

 薬物療法は現在製薬会社がしのぎを削って開発を行っており続々と新しい(副作用の少ない)薬が発売されつつあります。


写真提供:グラクソスミス

 腹圧性尿失禁が高度(尿漏れ量が1回10g以上)の場合や理学療法や薬物療法で反応が少ない場合は手術療法を選択します。以前は開腹手術や尿道にコラーゲンを注入し尿がでにくくする手術を行っておりましたが、1999年より本邦に導入された尿道スリング手術(左図)が日帰りも可能で手術直後より効果があり、当院ではすでに20数例施行しております。

おしっこのトラブルは是非一度泌尿器科専門医にご相談下さい。


(泌尿器科医師  陣内良映)

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 【排尿障害のくすり】

 排尿障害を起こす原因は、主に膀胱のトラブルと前立腺のトラブルに分けられます。膀胱のトラブルとしては膀胱の筋肉が勝手に収縮したり、過敏な働きをする過活動膀胱(尿意切迫感、トイレが近く、時にその結果もらしてしまう切迫性尿失禁などの症状)、骨盤底筋のトラブルで尿道をうまく締められなくなり尿もれを起こす腹圧性尿失禁などがあります。前立腺のトラブルとしては、大きくなった前立腺や膀胱の出口・尿道の筋肉の過剰な収縮により排尿障害を生じる前立腺肥大症があります。

 過活動膀胱の治療には、膀胱を収縮させる「アセチルコリン」という体内物質の働きをブロックすることで膀胱の過敏な収縮をを抑え、膀胱の緊張をゆるめる抗コリン薬が使われます。副作用として口の中の乾き、便秘などが現れる場合があります。

 腹圧性尿失禁の治療には、骨盤底筋体操というトレーニングが治療の中心ですが、補助療法として尿道を引き締める働きのあるβ2刺激薬が使われることもあります。

 前立腺肥大症の治療に は、交感神経遮断剤(α1ブロッカー)、抗男性ホルモン薬、漢方薬などの頻尿改善薬が使われます。α1ブロッカーは体内物質である「アドレナリン」の働き をブロックして、前立腺や尿道の筋肉の過剰な収縮をやわらげ尿を出やすくします。抗男性ホルモン薬は、前立腺を肥大させる男性ホルモンの働きを抑え、肥大 した前立腺を小さくします。長期投薬が必要で性機能障害などの副作用が出る場合があります。また前立腺肥大症の人が過活動膀胱を起こすことはよくあり、 α1ブロッカーと抗コリン薬を併用して症状をコントロールすることもあります。

 的確な治療を進めるためには、医師に症状をよく話し、相談することが大切です。

(薬剤科長  冨澤 達)

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 【尿失禁・・・食事の注意点】

 尿漏れの原因となる生活上の問題点から、特に食事に関することを挙げますと次のようなことが言えます。

  1. 肥満を解消する
    太っているといつも腹腔内や骨盤腔内の圧力が高く、骨盤低には大きな力がかかり続けます。尿漏れの量も多くなるので、肥満の解消をすることは重要です。食べ過ぎに注意しましょう。
  2. 便秘を解消する
    便が大腸にたまっていると膀胱機能が不安定になり、それが原因で尿漏れが起こっていることもあります。便秘解消には食物繊維の多い野菜類、海草類、豆類、きのこ類、乳酸菌(ヨーグルトなど)等を摂るようにしましょう。
  3. 水分を適量摂取す
    水分摂取が食事以外で2000ccを越える方は少し減らした方がよいかもしれません。また、少なすぎると膀胱にたまる尿の量が少なくなり、少ない量の排尿を繰り返す傾向になりやすく、尿が濃くなるため膀胱が刺激され尿意が強くなるとも云われています。1日の水分摂取量は1000cc程度が適量でしょう。

 また、個人差はありますが、体を冷やす食べ物は尿漏れの症状を悪化させてしまう可能性があります。夏野菜のキャベツやきゅうり、すいかなどがその例となります。利尿作用があるカリウムを多く含む果物(メロン、キウイ、バナナなど)の取り過ぎは尿の回数を増やす可能性があると云えるでしょう。逆に冬野菜や根菜類の大根、れんこん、ごぼうなどは体を温める作用があると言われていますのでお勧めです。

(栄養管理室長 浅井 和子)


診療科の特色

<泌尿器科>

泌尿器科では尿路悪性腫瘍(癌)を中心とした疾患とともに生活の質(QOL:Quality of life)を低下させる排尿機能障害(下部尿路症)に対しての精査・治療を専門として、現在5名の泌尿器科専門医師が担当しております。
 特に膀胱癌の治療に関しては内視鏡手術・開腹手術は県内一の症例数をこなしているだけではなく最先端の医療として(尿袋を必要としない)新膀胱形成術を積極的に行い、患者さまの満足度に貢献できるよう日々努力しております。


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