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消化器内科 | C型慢性肝炎/代償性肝硬変に対するインターフェロン・フリー治療

C型慢性肝炎/代償性肝硬変に対するインターフェロン・フリー治療

消化器科内科部長/消化器病センター長 杉 和洋


 C型慢性肝炎患者は本邦で150万人から200万人におよぶと推計され、現在国を挙げての対策がなされつつあります。2008年4月より医療費助成制度が開始され、各都道府県に肝疾患診療連携拠点病院が設置され診療ネットワークが構築されました。2010年1月に肝炎対策基本法が施行され、医療の均てん化を目的に地域医療連携が推進されてきました。治療の進歩は目覚ましく、難治例とされる1型高ウイルス量症例でも2004年からのペグインターフェロン・リバビリン(Peg-IFN/RBV)併用療法により持続ウイルス陰性化率(SVR)は50%、さらには2011年からこれにDAAs(直接作用型抗ウイルス薬)のNS3阻害薬(PI)テラプレビル(TVR)を加えた3剤併用療法、2013年から副作用の少ない第2世代PIのシメプレビル(SMV)3剤併用療法により約90%に向上しました。しかし、IFNが使用できない患者はこの治療の恩恵を受けることができませんでした。すなわちIFN不適格(高齢、血球減少、うつ病など)および不耐容(IFNによる副作用中止)症例です。また、TVRやSMV3剤併用療法に適応がない肝硬変例では十分な治療効果は得られませんでした。

 2014年9月新しいタイプのDAAsが発売されました。NS3/4A阻害薬アスナプレビル(ASV)とNS5A阻害薬ダクラタスビル(DCV)です。このDCV/ASV併用療法は、これまでの抗ウイルス治療とは全く異なるIFNを用いない経口薬のみの「インターフェロン・フリー」治療です。適応はゲノタイプ1型のC型慢性肝炎または代償性肝硬変で、IFN不適格や不耐容例にも使用できます。治療期間は24週でこれまでの1/2から1/3に短縮され、SVRは初回例で90-95%、前治療無効例で85%に向上しています。

 この間、2型のC型慢性肝炎に対しては、低ウイルス量ではPeg-IFNまたはIFN単独、高ウイルス量ではPeg-IFN/RBVで80%から90%の治療効果でした。それでもIFN不適格や不耐容例および前治療無反応例の課題が残されていました。2015年5月にNS5B阻害薬であるソホスブビル(SOF)が発売され、RBV併用治療が可能になりました。代償性肝硬変にも適応があり、12週間の治療効果は初回例で97%、再治療例で94%と極めて良好です。ただし、eGFR30(ml/min/1.73m2)未満の腎機能低下例には使用が制限され、RBVはCcrが50(ml/min)未満では禁忌です。

 2015年9月に満を持して次世代の1型に対するC型慢性肝炎・代償性肝硬変治療薬であるSOFとNS5A阻害薬レジパスビル(LDV)の合剤(ハーボニー配合錠)が発売されました。1日1回内服、12週間の治療期間で、驚くべきことに臨床試験では100%のSVRが得られています。さらに特筆すべきは、DCV/ASV治療で問題だったNS5A薬剤耐性変異(Y93およびL31変異)の存在での治療効果低下および多剤耐性変異出現の可能性がなくなったことです。ただし、DCV/ASV前治療不成功例の再治療に関しては慎重な対応が求められます。また問題点として、eGFR30(ml/min/1.73m2)未満の腎機能低下例には使用できません。人工透析を受けているC型慢性肝疾患患者は少なからず存在し、現在IFNが唯一の高ウイルス治療薬ですがリバビリンは禁忌で併用できず、その効果は満足のいくものではありません。ゲノタイプ2型に関しては今後の新薬の開発を待つ必要がありますが、1型では、NS5A薬剤耐性変異がなければ肝排泄型のDCV/ASV治療が可能で、すでに一部の医療機関で良好な成績が報告されています。また、SOFは徐脈性不整脈では投与禁忌であり、心疾患の合併があると使用が制限されます。

 さらに、同年11月に1型C型慢性肝炎・代償性肝硬変に対してNS3/4A阻害薬パリタプレビル(PTV)、NS5A阻害薬オムビタスビル(OBV)とPTVの増強作用を持ったリトナビル(r)の合剤であるヴィキラックス配合錠が発売されました。治療期間は12週間です。DCV/ASVと同様、肝排泄型であり腎機能低下でも使用可能ですが、発売後間もないため推奨はされていません。DCV/ASV治療で問題だったNS5A薬剤耐性変異ではY93変異があれば著効率は99.0%から83.0%に低下しますので治療前の耐性変異検査が必要です。カルシウム拮抗薬を併用した場合、浮腫関連有害事象が生じ、一部では低血圧、無尿、肺水腫が報告されています。その他にも、併用注意薬がありますので、投与に関しては細心の注意が必要です。

 今後、これまでIFN治療対象とならなかった高齢者や肝硬変を含む高度線維化進展例すなわち発がん高リスク症例に対するIFNフリー治療が増加すると予想されます。治療前に肝がん併存の有無のチェックはもとより、治療中のみならず治療後のサーベーランスがこれまで以上に重要になります。

 2008年4月より始まった医療費助成制度で患者の医療費負担は軽減し、多くの患者にとって抗ウイルス治療を受けやすい環境が整備されました。医療費助成制度が国民の税金で成り立っていることを考えますと、適応を見定めて、患者自身の理解のもとに治療を開始することが重要です。また治療開始後の中断は薬剤耐性出現の可能性があるため避けなければなりません。さらにB型肝炎ウイルス(HBV)の共存例では、C型肝炎IFNフリー治療に伴いHBVが再活性化することが報告されており注意が必要です。これらの治療にあたっては十分な知識・経験を持つ医師により適切な適応判断がなされた上で行う必要があります。C型肝炎撲滅はすぐそこまで来ています。


図1.DAAsの分類と作用機序
(日本肝臓学会編 C型肝炎治療ガイドライン(第5版)2016年5月)

図2.当院のC型慢性肝炎・肝硬変に対するIFNフリー治療件数
(平成26年11月~平成28年6月)

図3.C型肝炎治療フローチャート
(日本肝臓学会編 C型肝炎治療ガイドライン(第5版)2016年5月)

1. 慢性肝炎/ゲノタイプ1型(DAA治療歴なし)

2. 慢性肝炎/ゲノタイプ1型・2型(プロテアーゼ阻害剤/Peg-IFN/RBV 前治療の非著効例)

3. 慢性肝炎/ゲノタイプ1型(DCV/ASV 前治療の非著効例)

4. 慢性肝炎/ゲノタイプ2型(DAA治療歴なし)

5. 代償性肝硬変(初回治療・再治療)

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