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救急科 | 院外心停止患者に対する水素ガス吸入療法の有効性の検討(第Ⅱ相試験:多施設介入研究)について

院外心停止患者に対する水素ガス吸入療法の有効性の検討(第Ⅱ相試験:多施設介入研究)について

救命救急センター長・救命救急部長
 原田正公

Efficacy of Inhaled Hydrogen on Neurological Outcome Following Brain Ischemia During out-of-hospital cardiac arrest (Phase II, multicenter, prospective, randomized, double-blind, placebo-controlled trial) HYBRID II Study

 院外心停止は、非常に生命予後の悪いイベントの1つです。何とか生存できたとしても脳障害などのために社会復帰できる人はごくわずかであるのが現状です。心停止では循環が停止することで脳をはじめとする様々な臓器が低酸素・再灌流による障害を来し、心停止後症候群(PCAS, Post-Cardiac Arrest Syndrome)と呼ばれています。

 このPCAS に対しては、長い間呼吸循環管理などの支持的治療が主体でした。近年、鎮静下に体表冷却パッドや血管内冷却カテーテルなどを用いて強制的に32 ~36℃体温管理を行う体温管理療法(TTM, TargetedTemperature Management)が特に脳障害に対して有効であることがわかり、「低体温療法」として保険収載されています。現在多くの病院の集中治療室などで治療が行われております。しかし、TTM が広く行われるようになった以降も、その社会復帰率が劇的に改善したわけではなく、いまだに非常に予後の悪い疾患の1つです。

 近年、分子状水素ガスが虚血再灌流障害に有効であることが報告されました。水素ガスはヒドロキシラジカル(OH)のみを選択的に除去するフリーラジカルスカベンジャーで、分子量が小さく優れた拡散能を有することも特長です。慶應義塾大学病院は、ラット心停止モデルを用いた実験で、水素ガス吸入が低体温療法と同等の生命予後改善効果を認めることや低体温療法と水素ガス吸入を組み合わせた治療によってさらなる脳保護効果を発揮することを報告しました。さらに同院は世界に先駆けて、急性心筋梗塞やPCAS に対して水素ガス吸入療法の臨床研究(安全性試験)を行い、同療法が安全に実施可能であることを証明しました。そして、現在同院を中心として多施設共同前向き介入臨床試験が行われており、熊本医療センターもこの臨床試験に参加しております。

 本臨床試験は、適格性のある患者さまを水素ガス吸入群と酸素吸入群に二重盲検で割り付けて、TTM 治療を行う臨床試験です。水素ガス吸入療法は先進医療として登録されており、本試験に関わる費用は太陽日酸株式会社が負担しております。当院では現在2 症例を登録しております。水素ガス吸入療法はまだ臨床試験中の治療ですが、将来多くの患者さまがこの治療を受けられるようになることを期待しております。


↑水素ガス吸入療法中の様子

↑水素ガス吸入療法を行うための専用のボンベと
人工呼吸器回路

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