PEEC/PPST

PEEC (Psychiatric Evaluation in Emergency Care) 
PPST (Prehospital PEEC Skill Training)

救急医療の現場ではさまざまな精神医学的問題を抱えた患者に遭遇します。彼らは、緊急性と重症度が高い身体的問題を有することもあれば、心理的、社会的に複雑な問題を抱えていることもあり、それらが併存することもしばしばです。 救急外来は地域医療の大きな窓口として機能しているため、救急医療従事者は身体治療にあたるだけでなく、様々な医療的・福祉的リソースに橋渡ししていく役目も負っているといえます。

Psychiatric Evaluation in Emergency Care(以下PEEC)は、救急医療部門に従事する精神科を専門としないスタッフが、標準的な初期評価を行い、標準的な初期対応を出来るようになるための教育コースで、その目的は患者さんが安全に地域の医療資源につながっていけるような、円滑な支援の提供にあります。  PEECが成立するまでには様々な取り組みがありました。 平成10年、本邦における自殺死者が3万人を超え、以来平成24年に至るまでその水準を改善することは出来ませんでした。 将来的な自殺既遂を強力に予測する因子は、自殺企図(死ぬことを目的とした行動)の既往、自傷行為(必ずしも死のうという意思ははっきりしない行動)の既往であり、自殺未遂者や自傷行為者のほとんどは救急病院へ搬送される現状から、平成19年4月、日本臨床救急医学会は『自殺企図者のケアに関する検討委員会』(以下委員会,委員長 昭和大学医学部救急医学講座 三宅康史 教授)を設置しています。

その後、平成20年3月、委員会は『自殺未遂者ケアの手引き(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jisatsu/dl/07.pdf)』、次いで平成23年3月、『症例呈示とよくある質問集(http://jsem.umin.ac.jp/about/jisatsu_q&a1108.pdf)』を刊行、公開しています。 これはPEECの基本精神と同じく、搬送されてくる自殺未遂者に対し、精神科医の協力がすぐには得られない状況下でも、身体の治療と並行して危機対応、精神科的問題の把握と解決が、可能な限り標準的に出来るよう考えられています。 スキルアップの向上は座学だけでは得られません。 このため、平成21年度より、厚生労働省と学会が共催する形式で救急医療スタッフ向けの「自殺未遂者ケア研修」が開催され、それ以降も毎年3都市、各定員50名ずつが定期開催されています。 そこでは、自殺未遂者に対して、救急外来、救命救急センター、救命病棟で行える適切な評価、適切なケアをグループワークのなかで考え、自殺未遂者のケアに精通した精神科医、精神保健福祉士、臨床心理士がファシリテーションする中で解決策を見出していく流れになっています。

グループワークの経験が蓄積する中、社会的に大きな問題である自殺のみならず、救急医療部門に搬入される様々な精神心理的な問題を抱えた症例にも、標準的な初期評価・初期対応を可能とする教育コース構築への動きが始まりました。 臨床救急医学会のみならず、日本精神科救急学会、日本総合病院精神医学会もコース組み立てに参加し、委員会のなかで内容のブラッシュアップが試みられました。

この教育コースは、救急医療も、精神科医療も、両方こなせるハイブリッドな救急医、救急看護師ほかを育てるものではありません。現在、救急医療部門で働いている、プレ・ホスピタルからイン・ホスピタルのスタッフが、今あるリソースを有効に活用して患者の問題解決を援助する、そういったスキルの底上げを図るものです。 それが標準的な初期評価・初期対応になると考えられます。  平成24年6月、PEECガイドブック(へるす出版)が刊行されました。  平成25年1月より、PEECコース開発準備ワーキング・グループ(関東労災病院 東岡宏明救急統括部長)のもと、月に1度のペースでトライアルコースが開催され、平成25年7月12日、第1回PEEC公開コースから正式に全国展開開始となっています。 現在まで首都圏にある昭和大学病院、東海大学病院にて非公開コースが開催されています。

ここ熊本では、当院の他に2つの救命救急センター(熊本赤十字病院,済生会熊本病院)があり、いずれも全国トップレベルの救急車受入数があります。 この3つに熊本市民病院を加えた4つの救急病院で熊本市の救急搬送の65%を担っています。 平成24年8月に見直された自殺総合対策大綱にあげられている、「自殺未遂者の再度の自殺企図を防ぐ」ため、平成24年11月1日、4病院の救急部が力をあわせ、熊本救急医療自傷・自殺問題対策協議会を発足させました(発起人;池田学 熊本大学医学部附属病院神経精神科 教授,宮川洸平 熊本県精神科病院協会 会長(当時),橋本聡 国立病院機構熊本医療センター 救命救急集中治療部/精神科)。

現在、協議会では自傷・自殺未遂症例のケースカンファランス、看護部対象の研修会(希死念慮に対する傾聴と共感のスキルアップ講座)、救急隊員対象の研修会(プレホスピタル精神科系救急の研修会)を企画運営していますが、今回、PEEC熊本コースを開催出来たことは大きな喜びです。 これは地方開催としては全国初にあたります。ニーズが高いだけでなく、救急医療に関心の高い精神科医師が何人も協力したいと声を上げておられ、救急科医師と精神科医師が協働することで、今後も年に3~4回のペースで定期開催が出来るのではないでしょうか。  PEEC熊本コースの開催とその広がりによって、医療体制上いかんともしがたく存在する救急医療と精神科医療の間の溝を、リソースを活かす力で埋めていき、救急医療場面で混乱する患者が少しずつでも減っていくなら幸いです。

橋本聡

開催予定・開催実績

PEEC

開催日 開催場所 ディレクター コーディネーター 受講者数
23 2019年3月9日 国立病院機構熊本医療センター 山田周    
22 2018年11月23日 国立病院機構熊本医療センター 山田周 橋本聡  
21 2018年9月29日 国立病院機構熊本医療センター 山田周 橋本聡  
20 2018年7月14日 国立病院機構熊本医療センター 三宅康史
(帝京大学救急医学講座教授)
橋本聡  
19 2018年5月6日 国立病院機構熊本医療センター      
18 2018年3月3日 国立病院機構熊本医療センター 橋本聡 橋本聡 27名
17 2017年11月12日 国立病院機構熊本医療センター 橋本聡 橋本聡  
16 2017年9月10日 国立病院機構熊本医療センター 山田周 橋本聡 20名
15 2017年7月16日 国立病院機構熊本医療センター 山田周 橋本聡 12名
14 2017年5月7日 国立病院機構熊本医療センター 橋本聡   13名
13 2017年3月5日 国立病院機構熊本医療センター 橋本聡   22名
12 2016年11月6日 国立病院機構熊本医療センター 橋本聡   14名
11 2016年9月11日 国立病院機構熊本医療センター 橋本聡   9名
10 2016年7月24日 国立病院機構熊本医療センター 橋本聡   14名
9 2016年5月7日 国立病院機構熊本医療センター 橋本聡   9名
8 2015年11月1日 国立病院機構熊本医療センター 橋本聡   30名
7 2015年5月24日 国立病院機構熊本医療センター 橋本聡   30名
6 2015年2月1日 国立病院機構熊本医療センター 橋本聡   30名
5 2014年11月9日 熊本赤十字病院 橋本聡   32名
4 2014年7月13日 国立病院機構熊本医療センター 橋本聡   24名
3 2014年5月11日 国立病院機構熊本医療センター 橋本聡   29名
2 2014年2月9日 国立病院機構熊本医療センター 橋本聡   32名
1 2013年11月17日 国立病院機構熊本医療センター 橋本聡   18名

PPST

開催日 開催場所 ディレクター コースコーディネーター 受講者数
5 2018年11月24日 国立病院機構熊本医療センター      
4          
3 2018年3月4日 国立病院機構熊本医療センター 橋本聡 荒木龍起 9名
2 2018年11月11日 国立病院機構熊本医療センター      
1 2017年7月16日 国立病院機構熊本医療センター 橋本聡 荒木龍起 8名