【第90号】早期胃癌の内視鏡治療 胃癌の薬物治療に使用される薬剤 胃癌と食事 | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第90号】早期胃癌の内視鏡治療 胃癌の薬物治療に使用される薬剤 胃癌と食事

くす通信

早期胃癌の内視鏡治療、胃癌の薬物治療に使用される薬剤、胃癌と食事

 【早期胃癌の内視鏡治療】

 ごく早期の胃癌に対して胃カメラを用いて胃の内部から癌を切除する方法を内視鏡的粘膜切除術(EMR)と いい、この手技が開発されて20年以上が経過します。これはスネアと呼ばれる輪状の鋼線で癌を周囲粘膜ごと挟んで電気で焼き切る手法で、手技の性格上切除 できる大きさに限界があり、切除面の深さも一定しないため、具体的には2cm以上の粘膜表面の癌にしか適応がありませんでした。

 しかし、1990年代後半に従来のEMRの欠点を補い、大型の一括切除を目的とした内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)という方法が開発され、近年全国の施設で急速に普及しています。

 この手技は癌の周囲粘膜を全周にわたって切開し、特殊な器具を用いて癌を周辺粘膜ごとを剥ぎ取る方法で、これまでは切除不可能であったサイズの癌まで切 除可能となり、また比較的一定の深さまで剥離できるため従来のEMRと比較して遺残・再発が少ないといわれています。ただ、ESDは従来のEMRに比べて 高度な技術を要し、治療時間も長く、偶発症も多く発生します。当科では2005年6月よりこのESDを導入し、症例によってEMR、ESDのいずれを選択するか、適応を検討して決定しています。

 これらの内視鏡治療の利点は数ヶ月すれば粘膜切除部位もほぼ元通りとなり、胃の機能も正常に保たれることです。外科的に胃を切除した場合には、胃の容積が小さくなるため術後に胃もたれや膨満感が出現することがありますが、内視鏡治療の場合にはそういった副作用はほとんどありません。ただ、いくら早期胃癌の内視鏡治療の適応が拡大しているとはいえ、内視鏡治療を行うためには早期発見が第一で、定期的な検診が大切であることは言うまでもありません。

(消化器科医師  押方 慎弥)

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 【胃癌の薬物治療に使用される薬剤】

 胃癌の治療は、がんの進行度を診断した上、内視鏡的治療、外科的切除(手術)、抗がん剤による化学療法が選択されます。胃癌は抗がん剤が比較的反応するがんですが、まだ、抗がん剤だけでは胃癌を治すことはできません。延命あるいは手術を補助するものと認識する必要があります。

 化学療法には以下の三つの種類があります。

  1. 移転があって切除できない場合や、手術後に再発した場合の化学療法:このような場合は化学療法が第一選択の治療法です。より高い腫瘍縮小効果を期待して併用治療が行われます。薬剤の組み合わせとしては、フルオロウラシル(5-FU)とシスプラチン(CDDP)、イリノテカンとシスプラチンなどが実地臨床で行われています。
  2. 再発を予防する化学療法(術後補助化学療法):手術で切除できた場合でも、再発してくる可能性があります。再発を予防する目的で行われるのが術後補助化学療法です。最近の臨床試験では病期がⅡとⅢの胃癌術後にティーエスワン(TS-1:5-FUの効果を高めて、副作用を少なくした薬剤)を1年間服用すると再発が減るという結果が出され、今後標準的治療薬となっていくと考えられます。
  3. 手術の前に癌を小さくさせるための化学療法(術前化学療法):手術前にがんを小さくするために行われます。現在、さまざまな抗がん剤の組み合わせが臨床試験として検討されています。

 がん化学療法を効果的に安全に行うためには合併症や副作用対策が重要です。副作用が出現した場合には薬を中止したり減らしたりする必要があります。治療内容を理解し、副作用などの情報を医師と共有することが大切です。

(薬剤科長  冨澤 達)

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 【胃癌と食事】

 胃癌は40〜50歳の成人に発生し易いと云われています。胃癌検診を定期的に行うことは欠かせませんが、胃癌の予防において毎日の食事はとても大事です。 最近の研究では、特に高塩分摂取が発癌に関係していると云われています。食塩を多く摂取すると胃の中の粘膜が痛み、胃炎を発生し、発癌物質の影響を受け易 くなります。塩辛い魚の干物、漬物、佃煮、たらこ、塩辛、練りうになどの塩蔵品を毎日食べる人は少しずつ減らして、週1~2回程度にしていくことが大切です。煮物の味付けやかけ醤油なども控え、できるだけ薄味に慣れるように努力しましょう。

 そのほか、既に慢性胃炎の症状のある方では胃癌を予防するための食事、食習慣で気をつけたいことに、次のようなことが挙げられます。

  1. 食事は規則正しく決まった時間に食べましょう。
  2. 食品の数を増やして、栄養バランスをとりましょう。
  3. 新鮮な野菜を充分に摂りましょう(繊維の多い野菜はよく煮て)。
  4. 乳製品は毎日摂りましょう。
  5. 魚や豆腐・大豆製品を積極的に摂りましょう。
  6. すごく熱い食べ物や飲み物は冷ましてから食べましょう。
  7. 焦げた物は避けましょう。
  8. 食べ過ぎ、夜食は控えましょう。
  9. 香辛料、炭酸飲料など胃を刺激するものは避けましょう。
  10. よく噛んで、ゆっくり食べましょう。

 また、禁煙することも大切です。たばこに含まれる有害物質が胃の粘膜を刺激し、胃癌の原因にもなります。お酒と一緒に喫煙するとさらに危険度が増すと云われています。ストレス解消を上手にして、規則正しい生活をこころがけましょう。

(栄養管理士 浅井 和子)


診療科の特色

<消化器科>

 当科では胃や大腸などの消化管疾患、肝臓病などを中心に 各スタッフが消化器疾患全般にわたって診療を行っているなかで、それぞれが専門分野を持ち、特殊検査や治療などを行っています。また、胃カメラや大腸カメ ラ、腹部超音波などの一般検査も平行して行っており、昨年は1年間で胃カメラ3,116件、大腸カメラ1,064件、腹部超音波6,030件と年々検査数 も増加しています。今後も質の高い医療を提供できるようスタッフ全員で頑張っていこうと思います。


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