【第88号】舌にできつ出もの、腫れもの 舌や咽頭などのがんに使用される薬剤 そしゃく・嚥下障害と食事について | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第88号】舌にできつ出もの、腫れもの 舌や咽頭などのがんに使用される薬剤 そしゃく・嚥下障害と食事について

くす通信

舌にできつ出もの、腫れもの

舌や咽頭などのがんに使用される薬剤、そしゃく・嚥下障害と食事について

 【舌にできつ出もの、腫れもの】

 舌にできた腫瘤(出もの)や腫脹(腫れもの)の中で最も問題となるのは舌癌です。ただし、良性であっても全身疾患の部分症であったり、前癌病変であったりすることがあるので注意を要します。ここでは癌および癌に関連するいくつか舌の代表疾患について説明します。

 舌潰瘍は良性の代表疾患であります。慢性の刺激、感染やビタミン不足などにより起こります。舌緑部に起こることや肉眼所見は舌癌に似ていますが、通常は硬い部分(硬結)がありません。軟膏などの治療で治りが悪いときや硬結が生じたときは癌の可能性もあり組織検査(生検)が必要になります。

 無痛性で舌の表面にできる白色の病変があります。これは舌白板症と呼ばれるもので基本的には悪性ではありません。口腔内不衛生、喫煙、飲酒、義歯などによる慢性刺激が原因と言われています。ただし、前癌病変として知られており放置していると悪性化(癌化)することもありますので、十分注意して経過をみる必要があります。早めに切除を行い危険因子を回避する必要がある場合もあります。

 舌癌は一般に舌縁部から舌下部に生じるものが大半です。危険因子は舌白板症と同じです。硬結、痛みを伴い潰瘍や白色の病変がみられます。歯の痛みと勘違いされて受診が遅れる方もいらっしゃるので痛みを伴う場合は専門医の受診が大切です。早急に組織検査を行う必要があります。同時に画像診断も行い進行度(病期)を評価します。

 治療としては手術や放射線治療が中心になりますが、進行癌では手術的に舌を切除して切除量に応じて移植(再建)を行います。治療後に問題となるのは、嚥下機能(飲み込み)と構音機能(声の明瞭度)ですが、再建法の工夫により以前より機能は保存できるようになっています。しかし、早期発見が癌の治療に最も重要であるのは言うまでもありません。

(耳鼻咽喉科医長 緒方 憲久)

-*-*-*-*-*-     -*-*-*-*-*-

 【舌や咽頭などのがんに使用される薬剤】

 舌、喉頭、咽頭、鼻腔・副鼻腔などに発生したがんの治療は、切除可能な場合は外科的手術が第1選択とされています。切除ができない場合などは放射線療法や化学療法、またはそれらを併用した治療が行われます。主な化学療法としては3つの方法があります。

  1. 手術や放射線治療を実施する前に癌を小さくさせるための化学療法:多くの場合、化学療法は複数の抗癌剤を併用します。代表的な化学療法はシスプラチンとフルオロウラシルを併用したCF療法があります。腎機能が低下してる場合にはカルボプラチンが使われます。最近はドセタキセルをCF療法に加えたTPF療法も生存率の向上が認められ、より高い治療効果が期待されています。主な副作用としては骨髄抑制(白血球などの減少)、吐き気・嘔吐、脱毛などが共通に認められます。
  2. 放射線療法と同時に行う化学療法:放射線と化学療法の直接的な相互作用が働くため、抗腫瘍効果が増大します。上記で述べた多剤併用療法の他にティーエスワンの単剤あるいはそれとシスプラチンなどとの併用療法が行われています。放射線療法と化学療法を同時に行うため、副作用として、口内炎や咽頭炎を誘発しやすくなっています。
  3. 根治治療の後に行う化学療法:再発を抑えることを目的に行う化学療法です。どの薬剤をどの程度の期間投与するのかいまだ十分には明らかにはなっていませんが、1.及び2.で使われる薬剤による併用療法が報告されています。

 がん化学療法を効果的に安全に行うには合併症や副作用対策が重要です。患者さんが治療内容を理解し、副作用などの情報を医師と共有することが大切です。

(薬剤科長 冨澤 達)

-*-*-*-*-*-     -*-*-*-*-*-

 【そしゃく・嚥下障害と食事について】

 食べ物が口に入っあと噛み砕かれて「食塊」となり、のどに送られて飲み込まれる過程を「そしゃく・嚥下運動」といいます。この過程の中でどこかに障害があるとスムーズに食事を摂る事が難しくなります。食事を口に入れられない、口の中でうまく噛み砕けないことを「摂食・そしゃく障害」、ごっくんとうまく飲み込めない場合を「嚥下障害」といいます。原因は様々ですが、このような障害があると、栄養不足の問題や、食べ物が誤って気管に入り(誤嚥)肺炎を起こしてしまう嚥下性肺炎などの問題が生じます。

 そこで、食事の「形態調整」が必要になります。例えば、「細かく刻む」、「ミキサーやフードプロセッサーでペースト状にすりつぶす」、という工夫により食事が摂りやすくなります。特に飲み込む力が弱いときには、さらさらしたものより、ゼリー状、またはとろみがついたものの方が飲み込みやすい(誤嚥しにくい)といわれます。刻んだ料理に片栗粉のあんをかけたり、すりつぶしたものを寒天やゼラチンで固めるとよいでしょう。または、市販のとろみ剤を用いると簡単にとろみをつけることができます。

 咀嚼・嚥下障害があると脱水症状も起こしやすいので、充分な水分補給も大切です。ゼリーやシャーベットなど、のど越しのよいものを食事の合間に取り入れましょう。水やお茶にとろみをつけることも一つの方法です。

 しかし、毎食の食事を工夫するのはとても大変なことです。忙しいときや疲れたときは市販の「介護用調理済み食品」などを利用するのもよいでしょう。非常時に備えて買い置きしておくと重宝します。食事の形態調整でお困りの際には栄養士にご相談ください。

(管理栄養士  尾上 陽子)


診療科の特色

<耳鼻咽喉科>

 中耳炎手術の症例数は県下の公的病院の中で群を抜いて多いことはよく知られていますが、副鼻腔炎(蓄膿症)、扁桃炎、声帯ポリープといった鼻疾患や咽喉頭疾患にも力を入れており、年々症例数は増加しています。さらに本年度からは頭頚部腫瘍(癌)の治療も今まで以上に取り組みたいと考えています。前勤務先であった熊本大学附属病院耳鼻咽喉科・頭頚部外科では約8年にわたり私が中心となって熊本県下の頭頚部癌患者の治療を行っていました。その経験をもとに本院でも患者さんとともに癌の治癒を目指していきたいと考えています。


-*-*-*-*-*-     -*-*-*-*-*-

国立病院機構 熊本医療センター
診療時間 8:30〜17:00
診療受付時間 8:30〜11:00
休診日 土・日曜日および祝日

急患はいつでも受け付けます。

診療科

診療科目:総合医療センター(総合診療科、血液・膠原病内科、内分泌・代謝内科、腎臓内科、神経内科、呼吸器科)、心臓血管センター(循環器科、心臓血管外科)、消化器病センター(消化器科)、精神科、神経科、小児科、外科、小児外科、整形外科、脳神経外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、感覚器センター(眼科、耳鼻咽喉科)、気管食道科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、歯科・口腔外科、救命救急センター、人間ドック、脳ドック