【「アドバンス・ケア・ プランニング」のすすめ】
アドバンス・ケア・プランニング(以下、ACP)という言葉をご存知ですか?
この稿ではACPについて記してみようと思います。
ACPとは、エンド・オブ・ライフ(終末期)ケア(C:ケア)に関して、元気な時からあらかじめ(A:アドバンス)医療者と話し合い、どのように人生の終末期を過ごすかを設計すること(P:プランニング)をいいます。自身の最期になるときの、生活の場や医療処置に関して、医療者と話し合い、意思表示をすることです。
具体的には、
などの点が盛り込まれます。
大事なことは、自身が大切にしているものを最期まで大切にしていく、そのための生活方法と支援を具体的に検討することです。人生の終末期にどのように過ごすのかを目をそらさずに自分自身で考え、そのことを周囲の人たち(大切な人たちや医療者)と話し合うという過程が、病状を受け入れていくために必要な作業になるのです。
それではどうしてACPが大切なのでしょうか?
それは特にがん疾患の病状経過に次のような特徴があるからなのです(下図)。ある時点までは日常生活をそれまで通りに営むことができます。しかしあるところで、感染症、腸閉塞、腹水貯留などをきっかけに体力低下を来たし衰弱が急激に進行します。その時点からはおおよそ1~3か月間で死を迎えることが多いのです。すなわち、死亡する1~3か月前までは日常生活をすることができるので、死が直前に近づいているなんて思いもよりません。だから「まだまだ先はある、自分には終末期に関して話をすることは早い」と誰しもが感じています。たしかに予後がどのくらいあるのかは医療者にも正確には分かりません。しかし栄養状態や体重の変化、血液データや画像データなどから、病状が進行してきていることは分かります。終末期には様々な症状(痛み、便秘、食欲低下、倦怠感など)が出現するので、安心できる環境で十分なケアを受けることが必要です。しかし、いよいよの時になってから、さあどうしようかと慌ただしく緩和ケア病棟の面談をしたり、介護保険申請をして在宅診療の計画をしたり(いずれも自分ではできなくなっているので家族まかせになってしまう)しているうちに時間は過ぎ去り、十分な看護・ケアが必要な時期に、つらさを我慢しながら急性期病棟で過ごすことを余儀なくされることがおうおうにしてあります。従って抗がん療法を受けている時から(例えば抗がん剤の二次療法から三次療法に変更になる際などに)、ACPを取り入れることが勧められます。人生総決算のエンド・オブ・ライフの時間を、穏やかに過ごし、自分の人生を振り返る豊かな時間を持つことができるよう、ACPを行うことが大切なのです。
(腫瘍内科医長 磯部 博隆)
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【もっと近くに、緩和ケア】
(がん看護専門看護師 安永 浩子)
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<腫瘍内科>
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